自閉症の子どもの他害行動をやめさせるには?

自閉症の子供の他害行動

自閉症スペクトラムの子供が、友達をつねったり叩いたりすることって、よくありますよね。こういう行動を「他害行動」といいます。

こういった他害行動がエスカレートすると、殴る、蹴る、突き飛ばす、噛みつく、ものを投げつけるなどの強度行動障害に発展してしまいます。

他の子どもを傷つけたりするようになると、学校での居心地も悪くなる一方。止めに入った先生に噛みついたり殴りかかったり…という事例もよく耳にします。

中高生の男の子にもなると力も強いので、親としては心配でたまりません。

こういった自閉症の子どもの他害行動は、どうすれば改善するのでしょうか。

それには、「環境作り」が何より重要です。

 

自閉症スペクトラムの特徴

自閉症スペクトラムは、「自閉」という言葉から「うちにこもりがちな子供」というイメージを持ってしまうことが多いですが、そうじゃないんですよね。私も、発達障害について知らない時期は、そう勘違いしていました。

原因としては、親の育て方うんぬんではなく、生まれつき脳の機能に障害があるとされています。

自閉症の子どもの行動には、次のような特徴があります。

  • 言葉を聞いて理解するのが苦手
  • 相手の話には興味を示さない
  • 時間や数を予測することが苦手
  • 知っている言葉をうまく会話で使えない
  • 視線が合わない
  • 淡々と話す
  • 目の前にないこと(抽象的なこと)が理解しにくい
  • いつもと同じであることにこだわる
  • 「期待されていないこと」に注意が向かない

 

などなど。さらに、自閉症のこども一人ひとりを見ると、それぞれ少しずつ違った特性があります。

まずは、その子どもがどういった特性を持っているのかを知ることがとても大事です。

 

自閉症と知的障害の両方を持っている子が多い

知的障害がある子どもが自閉症であることも多く、2つを併存しているパターンはよく見られます。

知的障害の子どもは、同年代の子どもに比べて精神年齢が低く、自分で身の回りのことを行ったり、コミュニケーションを取ったり、外出の場面などで、いろいろな制限があります。

そこに自閉症の特性が加わることで、できないことや制限が増えます。そうなると子どもたちはさらに不安になり、ストレスを抱え続けている可能性があるといえます。

 

自閉症の特性は、すべての子どもで違ってくる

上記で挙げた自閉症の特性は、子どもによって微妙に違います。

例えばここで、「目の前にないこと(抽象的なこと)が理解しにくい」という特性について考えてみます。

ASISでは、子どもに1週間の予定表を渡して、自分でどんなプログラムをやっていくか決めてもらうようにしています。

ただ、自閉症の子どもにとって、目に見えていない先のことを考えるということは、かなりハードルが高いことです。またそのハードルは、子どもによって高さが違います。

  • A君は、1週間分の自分の予定を考えることができる。
  • B君は、3日後までの予定を考えることができる。
  • C君は、次の日の予定までしか理解できない。

 

こんな風に、子どもによってハードルが違うのに、すべての子どもに1週間分の予定を考えさせようとするとどうなるでしょう。個々に少しずつ違ったストレスが生まれてしまいます。

 

「その子どもができないこと」を理解する

自閉症の子どもの支援は、まずは「その子(C君)にできること、できないこと、そもそもできないことを理解する」ことから始まります。

上記のC君の場合、まずは次の日の予定をちゃんと立てられるようにサポートし、それができるようになったら、3日、そして1週間…というように段階を踏んで進めていく必要があります。

もし、C君の特性を理解せずに、いきなりC君に1週間分の予定を立てさせようとしたらどうなるでしょう。

C君の心は不安でいっぱいになり、それが「つねる、たたく」などの他害行動につながってしまいます。

そのことを分かろうとせずに、「つねる」という行動だけを取って注意したり、叱ってしまったという経験はないでしょうか。

これでは、自閉症の子どもの支援はできません。

 

今している行動を止めるのはNG

次に大事なのは、今まさに子どもがしている行動はなるべく止めない、ということです。

例えば「時間や数を予測することが苦手」という特性について、考えてみます。

例えば、自閉症のD君と買い物に行ったとき、次から次へとお菓子をかごに入れていったとしましょう。D君は、財布の中のお金では払いきれないことが、理解できていないのでしょう。

そんな時「そんなに買えないよ!」と、D君の手を止めてしまうこと、あるかもしれませんね。そしてかごの中のお菓子を棚に戻させようとする。。

D君にとっては、それがストレスの引き金になってしまいます。そして、つねるなどの行動に出てしまう。

この場合は、そもそも支援者があらかじめ「今財布の中に1,000円しか入ってないから、お菓子は3つまでにしようね」と言っておくことが必要です。

D君にとって、合計がいくらになるかを考えながら買い物をするのは苦手なことですから。

それを言わずに、D君のとった行動を止めることは、いい手段とは言えません。

分かろうとする努力が必要!

このように、自閉症の子どもに対しては、一人ひとりの特性を理解することが大事です。それは、実はとても難しいこどです。

そのために必要なのは「分かろうとする努力」です。

すべてを理解できなくても、みんなが分かろうと努力していたら、自閉症の子どもを取り巻く環境は徐々によくなっていきますよね。

そうすると、つねる・たたくなどの他害行動も減ってくるはずです。

 

特性のすべてを受けとめる

自閉症の子供の特性は、私たちにとっては謎ばかりです。ただ、その謎はすべて受け止めてあげましょう。

  • 私の言うことが理解できていないのは当たり前。
  • 私の話には興味を持たないのも当たり前。
  • 時間や数を予測することが苦手なのも当たり前。
  • 知っている言葉をうまく会話で使えないのも当たり前。
  • 視線が合わないのは当たり前。
  • 淡々と話すのが当たり前。
  • 目の前にないこと(抽象的なこと)が理解しにくいのも当たり前。
  • いつもと同じじゃないと嫌なのも当たり前。
  • 「期待されていないこと」に注意が向かないのも当たり前。

すべてを「当たり前」と思ってあげて対応すると、支援する側も楽になり、次のステップに進めます。

そのためにも、つねに受け止めてあげるよという空気作りもしておきましょう。

包容力のある支援者

大きな包容力のある環境を、家庭や学校・放課後デイのみんなで作ってあげると、問題行動はきっと減っていくはずです。