自分の子どもがあいさつがうまくできない。それは親にとってはとても不安なことでしょう。
なぜなら、あいさつは社会においてすべての基本となるものだから。
ビジネスマナーのセミナーでは、真っ先にあいさつの重要性について語られ、特訓をするところさえあります。
ただ、自閉スペクトラム症などの発達障害においては、「あいさつができない」ことが、そもそもの特性です。
そんなお子さんにとって、あいさつができるようになることは、本当に必要なのでしょうか。
発達障害の子供に、あいさつは絶対必要か
結論から言うと、「NO」です。
これは極論であり、私個人の意見だと思ってお読みくださいね。
一番大事なのは、「あいさつができないことで、生活や仕事で支障があるかどうか」です。
仮にあいさつができなくても、仕事に必要なスキルが十分にあり、そのスキルが評価されるなら、あいさつは仕事においてはそこまで重要な要素ではありません。
今は、メールやチャットだけでも仕事はできます。
また、企業に就職した場合でも、「あいさつが苦手」ということに周りの理解があれば、きっと過ごしていけるでしょう。
それは同時に、あいさつができるようにならないといけないというストレスからも解放されます。
そんなことはわかっている!という親御さんもいらっしゃるかもしれませんね。そのうえで、
- それを理解してくれる人がどれだけいるか。
- 理解のある会社が見つかるかどうか。
親はそれを心配します。
それは当たり前のことです。親は誰よりも愛情があるから。
あいさつにこだわることで、二次障害を引き起こす可能性がある
あいさつができないと、社会ではやっていけない。そうなると困るのは子供である。だからどうにかしたい。
でも、その思いは、同時に子供の負担を増やします。
負担が増えれば増えるほど、発達障害を越えた二次障害を引き起こしてしまいます。
ひきこもり、暴力、暴言、自害、他害などがそれに当たります。
- あいさつができないと、社会に出たとき困る
- あいさつを克服しようとしてストレスが増える
このどちらが、子供にとって重大なストレスになるか。
それをしっかりと見据えることが大事ではないでしょうか。
それを踏まえたうえで、発達障害の特性ごとに、対処法についてみていきたいと思います。
特性別におけるあいさつのニーズと対処法
こちらでは、発達障害のいろいろな特性ごとに、効果があった対処法をあげていきます。
自閉症スペクトラム
自閉症スペクトラムの子供は、そもそも人と目を合わせることが苦手です。できない子も多いです。
そのため、あいさつも、小声であったり元気がないように見えたりもします。
これは、持って生まれた特有の性質であり、改善はとても難しいものです。
そのことを周りが理解してくれないと、いじめや不登校、ひきこもりを誘発してしまうでしょう。
だからといって、あいさつができるように何度もアプローチすることは、その子供にとってとても大きなストレスになります。そもそも、できないという特性があるのですから。
自閉症スペクトラムの場合は、以下のような対応をすることで、少しずつ普段の様子も変わってきています。
- あいさつに対して無理をさせない
- 自分があいさつが苦手だということを、周りに伝えられるようにする
- あいさつができたときは、それを成功体験として褒めてあげる
- 代わりに「できること」を見つけ増やしていくことで、自信をつける
そういった支援をしていく中で、子供たちは、だんだんと変わっていっています。
ADHD
ADHDでは、あいさつができるお子さんは多いです。
ただ、何か他のことに注意が向いていると、全くあいさつは返ってきません。これも特性ですので、仕方がないことです。
ここで叱ってしまうと、叱られる体験が1つ増えます。同時に、自己肯定感が1つ減ります。
この積み重ねが、どんどんADHDの子供の自己肯定感を減らしていってしまいます。
ADHDの場合は、以下のような対処が効果的です。
- 他に気持ちが向いているときは、あいさつはできないと思っておく
- あいさつができなくても叱らない
- あいさつができた時は褒めてあげる
- あいさつを忘れてしまうことを周りに伝えられるようにする
選択性緘黙(かんもく)症
場面緘黙症とも言います。
緘黙(かんもく)とは、言語能力があるにもかかわらず、話せなくなってしまうこと。
選択的緘黙は、家族や親しい友人とは話せるのに、学校や知らない人など、ある特定の場所で沈黙してしまう障害です。
もちろん、あいさつはできません。(個人差はあります。)
選択性緘黙症の場合は、以下のような対処を心がけることで、少しずつですが対人関係がよくなってきています。
- 無理に練習させようとしない(症状が悪化することがある)
- 周りにきちんと伝え、理解を求める
- 気を遣いすぎない(かえってプレッシャーになる)
まとめ
発達障害の子供は、一見普通の子供に見えることもあり、なかなか理解が得られないことがあります。
あいさつができないことで、他人に不快感を与えることも少なくありません。
「あいさつはできなくてもいい」という意見には、賛否両論あるでしょう。
ただ、極論でいうと「足が不自由な子供には歩けるようになりなさいとは言わないのに、あいさつができない子供に、あいさつができるようになりなさいというのはおかしい」とは思いませんか?
身体の障害に対してはすべての人が協力的なのに、精神的な障害に対しては、まだまだ理解や協力体制が整っていないのが現状です。
それぞれの特性を理解できる人が少しでも増え、子供たちが生きやすい環境が整うことを願っています。