発達障害および知的障害をもつ子どもは、高校卒業後どういった進路を選択したらいいのか。
保護者のみなさんにとっては悩みどころですよね。
大学進学や障害者枠での就職をはじめ、いわゆる就労移行支援や、就労継続支援A型、B型などの事業所を考えている方もいらっしゃるでしょう。また、以下のようなお声もよく聞きます。
- 大学進学や専門学校はちょっとハードルが高いかも。
- でも18歳でいきなり就職させることにはちょっと抵抗がある。
- できればもう少し同年代の子どもがいる環境で、スキルアップしたりコミュニケーションについて学んでほしい。
このように考えるのも、とても自然なことです。
こんな方のために、「自立訓練」「福祉事業型専攻科」などの施設も増えてきていますが、まだまだ知られていないのが現状です。
こちらでは、発達障害および知的障害の子どもの、高校卒業後の進路についてまとめました。それぞれの特徴を押さえていただき、その中でお子さんにふさわしい場所を、ぜひ一緒に考えてあげてください。
大学進学を考えている方は、発達障害児の大学選びで大切な5つのポイント もぜひお読みください。
高校卒業後の進路先一覧
一般就労系
進路先 | 特徴・留意点 |
---|---|
一般就労 | いろいろな職種が選べがキャリアアップや高収入も可能。半面、就労後、特性が理解されずにストレスが増えることもある。 |
一般就労 (障害者枠) |
障害や特性に理解のある中で、さまざまな支援制度が利用できる。求人数は少なく、仕事も限られることがある。(手帳が必要) |
特例子会社 | 障害のある方の雇用の促進や安定を図るために設立された会社。働きやすい環境は整っているが、障害者枠と比べると、より求人数は少ない。(手帳が必要) |
福祉サービス系
進路先 | 特徴・留意点 |
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就労移行支援 | 一般就労を目指す就労訓練の場。2年間限定。 |
就労継続支援A型 | 事業所から直接雇用されて働く場所。最低賃金が保証される。 |
就労継続支援B型 | 一般就労が困難な人が働く作業所。働いた分の工賃が支給される。 |
自立訓練 | 自立した日常生活や将来の就労のために必要な訓練や相談、助言などの支援が受けられる。2年間限定。 |
福祉事業型専攻科 | 自立訓練の一環。高校卒業後、もう少し学びたいという場合に通える場。 |
※福祉サービス系の事業所を利用する場合は、受給者証が必要となります。
それぞれについて、もう少し詳しくご紹介していきます。
一般就労
一般の企業に就職するケース。さまざまな職種が選べますし、キャリアアップや高い給料も見込めます。
障害をオープンにしない場合、働き方や言動で苦労することは多いでしょう。仮にオープンにしたとしても、発達障害などに関する理解が得られないことは多く、それゆえに悩みやストレスが増え、結局辞めざるを得なくなることも。その後、就労移行支援や就労継続支援A型に進むというケースも少なくありません。
重要なのは、本人の特性が生かせる職種を選ぶこと。また、合わなければ次のステージに切り替えられる力を持っておくことです。
一般就労(障害者枠)
自身の障がいをオープンにし、障害者枠で就職するケース。手帳の取得が必要です。
「障害の種類・特性を伝える」ことで、それぞれに配慮した適切な仕事環境や仕事内容を用意してもらえます。
発達障害の場合、高校生になっても本人にちゃんと告知していないという保護者の方もいらっしゃいます。その状態で一般就労に進むと、そこでお子さんが行き詰ることは大いに考えられます。
就職を機に特性についてお子さんとよく話し合い、障害者枠のように発達障害に理解のある環境を勧めてあげることも大切です。
特例子会社
特例子会社とは、障害のある方の雇用の促進や安定を図るために設立された会社。
シャープ、パナソニック、ダイキン、パソナなどのような大手企業における「障害者専門の子会社」といったイメージです。
障害者のために働きやすい環境が整っていますが、一般企業の「障害者枠」と比べるとより求人数は少ないのが現状です。
参考:平成29年特例子会社一覧
就労移行支援
一般就労を目指すための「就労訓練の場」です。2年間という縛りがあります。
高校卒業後に、この就労移行支援に進む方も多いです。将来は一般企業への就職を希望しているけれど、高校卒業後いきなりは難しい場合などに活用するといいでしょう。就職に必要な知識やスキル向上のため訓練、求職活動のサポートなどもしてくれます。
- 身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、難病のある方
- 65歳未満の方
- 一般企業へ就職したいと考えている方
障害者手帳がなくても、医師の判断などにより、就職に困難が認められる方も利用することができます。
就労移行支援は、事業所により年齢層や特性、訓練内容が大きく異なります。いろいろな事業所を見学・体験し、それぞれの特徴をしっかり把握したうえで選ぶことが大切です。
就労継続支援A型
A型の事業所は、就職という扱いになります。カフェのスタッフ、データ入力、チラシ作成、部品の加工をはじめ、いろいろな職種があります。
一定の支援を受けながら働けること、最低賃金が保証されているのが特徴です。
- 特別支援学校で就職活動をしたけれど、雇用に結びつかなかった方
- 就労移行支援で就職活動をしたけれど、雇用に結びつかなかった方
- 就労経験があるが、現在は働いていない方
平成29年度の平均時給は818円、平均賃金月額は74,085円となっています。
就労継続支援B型
軽作業などの就労訓練を行うことができる作業所。
就職という形ではないため賃金は発生せず、作ったものに対する成果報酬として「工賃」が支払われます。
知的障害が大きい場合は、B型事業所に進むお子さんも多いです。就労移行支援でアセスメントを受け、就労が難しいという場合に利用することになります。
18歳ですぐに作業所で働くことに抵抗がある方は、次に挙げる自立訓練や福祉事業型専攻科なども、考えてみてはいかがでしょうか。
自立訓練
高校を卒業したばかりでは、まだ生活や心が安定していないお子さんも多いですよね。就労移行やA型、B型などの障害福祉サービスを利用する前に、もう少しゆっくりと学ぶ時間が必要なケースもあるでしょう。
そんなときに利用できるのが、自立訓練(自立支援)です。
自立訓練では、自立した日常生活のために必要な訓練や、生活等に関する相談および助言などの支援をしてくれます。生活リズムを整えたり、余暇の過ごし方を学んだりすることもできます。
- 地域生活を営む上で、生活能力の維持・向上などのために、一定の支援が必要な精神・発達・知的等の障害をお持ちの方
- 病院を退院・施設を退所後、地域生活への意向を図るうえで、生活能力の維持・向上等の支援を必要としている方
- 特別支援学校を卒業した方、継続した通院により症状が安定している方
- 18歳から64歳までの方
福祉事業型専攻科
自立訓練の一環。自分が望む進路についてもっとゆっくり考えたい、いきなり就職するより勉強したい(でも大学進学は無理…)という方におすすめの、生活訓練事業を行う事業所です。
高校を卒業後に利用するケースが多いので、同年代の児童と過ごせるのもメリット。2年間利用できます。(18歳以上なら、卒業していなくても入学できます。)
まとめ
以上のように、発達障害・知的障害をもつお子さんの、高校を卒業したあとの進路は多様になってきました。
最近では、高校を卒業してすぐに働くのではなく、時間をかけて就労に向けての準備をしたいと思う保護者の方も増えてきています。
仕事をするにあたり、自分の障害の特性を知っておくこともとても重要です。
お子さんが、特性にあった仕事を見つけ、そこで楽しく働けるだけの力をつけていけるよう、ご家族で話し合ってくださいね。